タイトル


「バックパック付き人型仮装が最適」という定理を証明した
仮装の完成度と歩き易さを同居させた最終形態。

写真
衣装データ
モデル 二宮金次郎像
形状分類 着ぐるみ+ハリボテ型
選択理由 歩き易い仮装の実験
サイズ 身長180cm
台座部分 W60×D60×H60cm
重量 10.5kg(台座・寝袋・着替え等も含む)
外面材料 布・発泡スチロール
ラテックス塗り
フレーム材料 木材
その他の材料 紙粘土
レジンキャスト
軟質ウレタン
雨対策
歩き易さ 良好
手の振り 良好
通常視野 普通
視野確保用ハッチ なし
後方確認 普通
ゴール 19:30

構造図
構造図
color 肌に密着していない装着物とそのフレーム
color 肌に密着している仮装用装着物
color 仮装に準じた形状に加工したバックパックや仮装固定具
color 仮装に関係ない荷物やバックパック
color 仮装用装着物なし
←open 視野確保用ハッチ



■説 明

     11年間続けてきた百ハイもこれで最後…と言うわけで、引退試合(?)にふさわしいものにすべく、今まで積み上げてきた経験の集大成にしようと思い、今回はCMキャラや話題の商品から離れ、
    「百ハイ仮装では、バックパック付き人型が最適である」
    という自論を証明すべく選択したのがこの「二宮金次郎像」…ご存知の通り、薪を担いで本を読んでいる姿で知られているので、この自論に準じている姿なので選択。他に前回の「小便小僧」つながりで「動かない物が動いたら面白いかも?」という理由や、昨年に二宮金次郎(尊徳)縁の地である栃木県二宮町の近所の下館に引っ越したことも関係していますがね。
     制作方針は、昨年の小便小僧で使った手法と同じ布+ラテックスの組み合わせ。ただし、軟質ウレタンは挟まず、布一枚にラテックスを塗る事によって動きやすさを向上させる事に。
     一番手間がかかるのが顔。この部分は隠さないと完成度が極度に落ちますが、完成度を高めると逆に視野が狭くなります。でも今回は人の顔そのままの大きさ&形状ですから、なるべく自分の顔にピッタリのマスクを作る事によって顔に密着させ視野が狭くなる事を防ぐ事が可能。でもそれにはどうしても自分の頭の型を取る必要があるわけで…なるべく安く簡単に頭の型を取る方法は無いかと思案した結果、100円ショップでどっさり買ってきた油粘土の塊の中にグリグリと顔をうずめた後顔を外し、そこに石膏を流して顔の型を取ってみました。特撮用メイクをするわけではないので精度はさほど必要ないので、この程度の手法でどうにかなるだろうと思ってましたが、実際やってみたら油粘土の量が少なかったせいで石膏の重みで型が変形して実際の私の頭部とはかなりの誤差が出てしまいました…ま、この辺りはあとで何とか補正しましたが。
     石膏の頭型が出来たら、剥離剤を塗った後、その上に短冊状に切ったニットをレジンキャストに浸した物を巻いていきます…2分ぐらいでレジンが硬化してしまうのでその間に作業を終わらせなければなりません…硬化した後、型から剥がすと、似非FRPマスクの完成です。剥離剤を塗ったとしても石膏自体がかなりもろいのでほぼ一回で駄目になると思ったほうが良いでしょう。あと、普通のレジンは中毒性のある揮発性ガスを発生するので、本当はこんな顔に密着させる物には向いてません…あまり真似しないように!
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     当初マスクは前後に分割するタイプにしようと思ってましたが、上手い固定方法が思いつかなかったので、首〜後頭部の穴を大きくしてすっぽり被るタイプに変更。下地の紙粘土を薄く塗った後、髷部分の台座に板をネジ留め。そして本格的に肉付けしていった後、下地に黒ジエッソを塗り、その上から青銅色のラテックスを塗った後、若干ゴールド顔料を振って金属感を出して…マスクは完成。見てわかると思いますが、私の顔の輪郭&配置をベースにしているので、本物の二宮金次郎像(推定年齢12〜15歳?)よりもかなりフケ顔なのよね(汗)
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    さて、ここで今回の仮装の弱点について考えてみると…一番の弱点は「等身大である事」につきます。人と同じ背の高さなのであまり目立たないわけで。これを解決するためには銅像らしく台座の上に載るのが一番。そう考えて、持ち運べる折り畳み台座とそれを収納できる構造のバックパックを製作する事にしました。
     こう言う台座の構造には大きく分けて表面を堅い物で作り骨組みを省略する「外骨格型」と、表面を軽くて弱い物で作り中心部に丈夫な骨組みを組む「内骨格型」がありますが…今回は後者を採用。
     台座外面は屏風風に折り畳み出来るスチレンボードに大理石風のテクスチャを印刷した防水紙を貼ったものを使用。その内部に人が乗っても耐えられる様に折り畳みアルミ脚立を内臓させます。これを折りたたんだものが収納できる様に、バックパックの薪部分の中を空洞にし、その周囲を発泡スチロールで覆い、薪風に掘り込んだ後着色。完全に背負子を作っても良かったのですが、背負いやすさを考え、リックサックを土台にするタイプに…つまりは、この薪部分は端的に言えばリックサックのカバーです。リック内部に着替えなどを入れる事によって、収納された台座パーツがガタガタするのを防ぐ事が可能です。
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     収納された写真を見てもわかると思いますが、結構すき間があるので、今回は大荷物をトラックで運んでくれるサービスを利用せずに、寝袋その他の荷物を全部持って歩きました。衣装重量が重いのはそれが原因。ま、この荷物がなくても約8kgになりますがね…台座が意外と重いです。
     残るは着物部分だけですが…これはまぁ普通の裁縫の範疇なのでささっと縫って&塗って完成。余裕があったので、草鞋部分も追加…実際に草鞋で歩くわけには行きませんのでウォーキングシューズの上にかぶせられるカバーになっていて台座の上に立つときのみに使用。実際に歩く時は台座と一緒に収納しています。このほかにも、持っている本の中に行程マップを挟んだり、ペットボトルホルダーにもラテックスを縫って質感を統一させたり…
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     実際歩いてみて、やはり人型は歩きやすいことを痛感。ペースとしては、一日目は昔よりも距離が長くなったにもかかわらずペプシマンと同じ時刻に仮眠所に到着できたし、二日目も先行集団がコースを間違って、百ハイコース中もっとも険しい所沢キャンパス裏の未舗装の山道を2.5kmほど余計に歩かされたにも関わらず閉会式に余裕で間にあったし。スジ系の痛みは皆無で筋肉痛もかなり軽くてすみました。
     しかし、1つだけ大問題が発生…それは、
    「初日の強い日差しで衣装表面のラテックスが溶けたこと」
     ベタ付き防止の表面処理をしていたものの、地の色が黒なものだから直射日光を受けかなり熱くなり、内側から解け始め、全身ベトベト…もし良い臭いがしていたらハエとかたくさん取れただろう(笑) 着るのも脱ぐのも大変だし、触っただけでもベトベトになってしまう有様。せめてもの救いは2日目が曇り&小雨だったので融解がそれ以上進まなかった事かしらね。ま、ある意味「タレ具合」がリアルさをUPさせたから良いか?
     あと、眼鏡の曇りが酷かった…マスク部分が顔の間に若干すき間があったせいで中でこもった吐息が目の穴からも漏れたのが原因。夜、気温が下がってくると、普通に息をしたら前が殆ど見えなくなるので、鼻で息をせずに、口の部分の小さな穴から勢い良く吐くしかない。その結果、見た目が無表情なのに、呼吸音が大きいものだから、「ウォーズマンみたい」と言われたり。いつも一緒に歩いている仲間からも「表情が見えないから、どれほどつらいのかわからない」との声も。
     受け具合は…およそ全年齢に受けていた様ですが、今回は特に中高年層に大ウケ。恐らく学校に二宮金次郎像がたくさんあった世代なんでしょう。子供達は確かに見て大騒ぎするのですが、「みどり〜みどり〜!」とか「ブサイクな銅像!」とか見た目だけで騒いでいるだけで「二宮金次郎」だと認識している率は少なかったみたい。最近の真新しい学校には金次郎像はあまり無いんだろうね。とにかくデジカメ付き携帯を向けてくる人が例年になく多かったねぇ。でも東京に入ってからあえて目をそらす人が急増…都会の冷たさってヤツですか?
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     今回雨具として頭に被る笠とビニール製の専用合羽(蓑?)を用意していましたが、さほど雨は強くなかったので笠のみでしのぎました。 閉会式では、大隈講堂の壇上で白井総長と握手…握手前に「ベトベトしますので後で手を洗ってください」と囁いたら握手の後、何か汚い物を触った時のように手をはたいてくれた(笑)…囁いた甲斐があったもんだ。
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