タイトル



     「百ハイには百ハイの仮装法がある」…という信念の基に、百ハイで仮装する上で重要だと思われる仮装方針やら心構えなどをつらつらと書いてみました。例のごとく、私の仮装におけるモットーが色濃く影響していますので、一般的ではない部分があるかと思いますから、取捨選択しつつ読んで下さい。

    1. コスプレとの相違点
    2. 仮装する理由
    3. 仮装対象の選択
    4. 資料集め
    5. 製作計画
    6. 必殺の団体技
    7. 歩行時のトラブル対処
    8. 靴だけは!
    9. その他いろいろ



    ■コスプレとの相違点

     百ハイ仮装と一般の漫画アニメ系コスプレには、「衣装などを身にまとう事によって、自分ではない何かに似せた姿になる」という点で同じですが、その製作方法や装着者に要求される身体的能力に少なからず隔たりがあります。両者を比較してみると次のようになるでしょうかねぇ。

    コスプレ 百ハイ仮装
    ポーズをとる体力でOK。 体力 100km歩く体力が必要。
    軽い動作に耐えうる構造で構わない。
    2日間風雨にさらされながら100km歩く振動に耐える構造であることが必要。
    日常動作に支障の無い材質なら多少硬くてもやわらかすぎても問題ない。
    軽くて丈夫で柔軟性がある必要がある。肌に触れる部分は約十数万回こすれる事を前提にした柔らかいもの。
    ポーズさえ取れれば重くても構わない。
    100km歩いて運べる重さに抑えねばならない。
    漫画やアニメに知識がある人が着る&見るので、マイナーキャラでも反応がある。
    老若男女に知られたキャラクター、人物、物体でないと誰にもわからなくて無視される。
    漫画やアニメのキャラクターと同等の華やかさがあり、小物などを充実させる事が可能。

    体への負担を軽くするために、余計な小物を排除して必要な物だけをコンパクトにまとめるので、完成度や見栄えが比較的劣る。
    ちゃんと作っていて、丁寧に着ていれば、次の機会に使えるので、お金をかけて作る価値がある。
    半壊、中破、大破は当たり前なので、殆どの場合二度と使えない。大金をかけて作ると無駄。


     この事からおぼろげながらにわかると思いますが、とにもかくにも百ハイ仮装には体力や忍耐力が必要で、米粒に文字が書けるほどの手先の器用さは無くても構わないのです。「細やかな衣装が作れる技術を持った人が、無理して100km歩く」よりも、「100km歩く体力がある人が、無理して出来の良い衣装を作る」のほうが早道だと思われます。とにかく、「100km歩ききる」ことが最優先事項なので、仮装のせいでそれができなくなる事は本末転倒なのです。




    ■仮装する理由

     百ハイで仮装する目的は、人それぞれだと思いますが、およそ次のようなものがあるかと思います。

    1. 注目を集めたい。
    2. 苦しい道のりを少しでも楽しく歩きたい。
    3. 苦しい道のりを少しでも楽しく歩いてもらいたい。
    4. 十分体力があるので、ハンデとして足枷代わりに。
    5. 仮装大賞をとって来年の参加費を浮かせたい。

     私の場合は、既に感覚が麻痺している部分と義務感に駆られる部分があるので、3〜5あたりが妥当かしら。
     また、こういう大勢参加者がいるイベントではありがちなのですが、「オレは100kmも歩くというすごい事を為さんとしているのだから道を開けろ」とでも言わんばかりに、交通法規&道徳を無視した動きをする人がかなりいます。
     しかしながら、何度も完歩しており、さらにイベント以外でも数十km歩く事が多い私に言わせてもらえば、100km歩いたぐらいで精神鍛錬の足しにもなりません。また、「俺ってなんてバカな事をしているんだろう」と悦に浸れるほどの行為でもありません。足の痛みに耐える事は忍耐力向上の必要条件ですが十分条件ではないのです。あくまで百ハイは「人生における1つの経験」であり、他の経験と同様に、心持ち次第でその経験がプラスにもマイナスにもなる、という事を忘れないようにしなければなりません。まぁ、この人がそこから得る物が多種多様である、という点も百ハイの魅力の一つではありますが。
     そこから得た物がなんであれ、百ハイの思い出を反芻する時、その一つ一つの記憶を鮮明にする手助けをするガラクタ(=仮装衣装)を1つぐらい押入れの中に増やしても良いのではないでしょうか?それだけでも「仮装する理由」の1つになり得ますしね。




    ■仮装対象の選択

     仮装する対象を選ぶ時は、誰もが頭を悩ませると思います。実際、私もこの選別に数ヶ月かけています。この選択は「誰にその仮装した姿を見せたいか?」によっても変わってくるでしょうが、大きく分けて下の二つになるでしょう。

    1. 一緒に参加する同グループの人向け
      • 女装・男装
      • 特殊な職業のユニフォーム
      • 同グループ内だけでは知られているキャラクターやマスコット

    2. 参加者や道中の一般の人向け
      • 露出系・塗りたくり系
      • 一般的に知られているキャラクターやマスコット

     仮装参加者のかなりの割合を占めているのは1に属する仮装です。「いつもは**なあいつが、今日はこんな格好をしている!」という驚きで、同じグループ内では大ウケしますが、グループ外からは、反応薄…グループ外の人には「いつもは**な〜」の部分の知識が無いために、そのギャップがわからないのが主たる原因です。最初は一緒だったグループも歩いているうちにバラバラになりますし、また他グループの参加者と会話をするのも百ハイの楽しみの1つであるんですから、出来れば内輪ウケなキャラ選択は避けた方が無難でしょう。この辺の絡みで、私は認知度の差が激しい漫画アニメ系の仮装は候補から完全除外しています。
     また、露出系・塗りたくり系はグループ外からの反応も少なからずありますが、どちらかと言うと、「笑わせている」のではなく「笑われている」だけです。他のグループの人と話をしようとしてもまともな話にはなりません。
     他の参加者や道中の一般の人たちのウケを狙うなら、やはり、メディアへの露出度が高く、一般的に知られているキャラクターやマスコット、商品を模した仮装をするのが最適です。
     しかしながら、この「一般的に知られている」という条件がかなり曲者でして…「TVのCMでいつも見てるからみんな知っているだろう」と思っていても、それは自分がいつも見ているTV番組のCMに流れているだけで、他の番組のCMとしては流れていなかったりすることもあります。ですから、この「一般的に知られている」キャラを見つけ出すためには、より多くのメディアや市場に目を向け、各個人の「一般的な知識」の共通部分を見つけ出すことが必要になってくるわけで…これに関しては私も出来ているかどうかは怪しいですが、出来る限りの努力はしているつもりです。




    ■資料集め

     何に仮装するかがある程度決まったら、その仮装対象の資料を集めます。 CMキャラの仮装をしようとした場合、最近では、インターネット上でそのCMの専用ページなどが開設されている場合がありますから、そのページを探して、そこから資料を集めることも可能です…便利な時代になりました。
     資料が集まったら、実際に製作・装着して歩こうとした場合にどうなるかを考えます。例えば、

    • その仮装衣装の材料として適切な物はあるか?
    • 中に人が入って歩ける形にする事は可能か?
    • 夜歩く時に安全な様に、視野の確保は可能か?
    • 他の参加者の迷惑になる形状ではないか?
    • 家〜スタート地点、ゴール地点〜家までの運搬が可能か?
    • そもそも、自分がそれを着て100km歩けるか?

    などがあるでしょう。この辺りは、資料と自分の体のサイズを比較しながら、計算機とにらめっこしつつ色々と想像をめぐらせます…もしかするとこの段階が一番楽しい作業かもしれません。  私の場合は、デジカメで撮影した自分の全身写真と仮装対象の三面図(手に入らなかったら自分で作る)やデジカメ画像をグラフィックソフトで重ね合わせて、拡大率を決め、そこから型紙を作って行きます。
    写真写真
    ▲ASIMOの模型から体に合う型紙を抽出

     型紙が出来た時点で、可能ならば、型紙の表面積と衣装用の材質の比重から衣装重量の推定値を割り出しておいたほうが良いでしょう。重くなりそうだったら、材質を選択しなおすか、型紙を書き直すか…それでもダメなら体を鍛え始めましょう(笑)




    ■製作計画

     仮装衣装を作るに際して一番気がかりなのは、製作費用でしょう。たとえ仮装大賞を取れたとしても、賞金が出るわけではなく、来年の参加費(学生3500円・一般6000円)がタダになるだけです。出来れば、参加費以下に抑えたいところですが…既製の被り物でもかなりの値段ですし、自作にしても、安く上がりそうで、細々した物を買っていると結局かなりの値段になってしまう事もしばしば。ですから、元をとる事など考えずに、自分が作りたい物を自分が出せる金額で作るのが一番です。
     私の場合は、元が取れたのは恐らく最初に仮装大賞をもらった「正露丸」のみでしょう。それ以外は殆ど参加費の額をオーバーしています。ですが、それほどお金をかける訳にも行きませんから、初期の頃は自分で勝手に「制作費は1万円まで」と決めて作っていました。しかしながら、最近はついつい凝ってしまいASIMOやDAKARAはでは、3万円前後になっています…失敗してゴミとなった材料を含めるともう少し出費がかさんでいますが、ASIMOの一部にトロの材料が使われていたり、DAKARAの一部にたまごっちの材料が使われていたり…と、昔買った材料の余り物を利用してますから、正確な額は不明です。

     また、制作時間は十分にとる事をお勧めします。学生でも社会人でも4〜5月といえば、一番忙しい時期ですから、3月ごろから作り始めるのが良いでしょう。
     私の場合、制作に要する期間は半月〜1ヵ月半ですが、実際の製作に入る前に、前年の年末〜2月に仮装対象の選別、3月中は資料集め…と下準備を十分に行っています。まぁ、いつも予定通りには進まず、えらい目にあってますけどね。お陰で、ここ数年GWをゆっくり楽しんだ記憶がありません。ASIMOにいたっては、塗料の最後のひと塗りが終わったのは百ハイ当日の朝3時でしたし…




    ■必殺の団体技

     私が次の百ハイ仮装を製作している最中にいつも考えるのは、「もし、今作っている仮装を負かす事が出来る仮装があるとすれば何か?」についてです。十分な検討期間を経て選んだキャラに、ダメ押しの小技を追加しても、なおそれを打ち負かす事が出来る百ハイ仮装…それは、言うまでも無く「見事な団体仮装」です。
     私も数名の団体で参加していますが、仮装に力を入れいているのは、私も入れて2名のみ…しかも打ち合せなどしていないので、団体技は不可能です。ですが、同じ志向の仲間が集まったグループ参加者は団体仮装にぴったりです。この団体コンボが見事に決まった場合、どんなにすばらしい仮装でも単品では太刀打ち出来ません。
     ただ、この団体技には、かなりの問題点があります。例えば、

    1. 人数が「5人」などと決まっていた場合、誰かが不参加・リタイヤすると駄目になる。
    2. 人によって歩くペースが違うので、団体がばらける可能性が高く、全員がそろって意味を成すものは不向き。
    3. 人数分の衣装を作る時間とコストが大変。
    4. 計画性の無い団体ものは通行の邪魔でしかない。

    といった物があげられるでしょうね。これらの問題を解決できる団体物仮装対象を見つけるのは困難ですが、もし仮に問題を解決・実現できたら、間違いなく最強の仮装軍団となるでしょう。
     参考までに、私が考えた上記の問題を解決できる団体物仮装対象として見つけたのは「ピクミン」でした。これなら、

    • いちばん体力がある人をキャプテン(オリマー)にし、残りはピクミンとして基本的には彼について歩く。
    • 色・形状により動きに差があるので、歩くペースの違いによってばらけても逆にリアル。
    • 数が決まっていないのでリタイヤが出てもOK。
    • キャラデザインが比較的単純なので、衣装の大量生産がわりと楽。
    • 歌も流行って、ゲームをしない一般の人にも認知度があった。

    など、団体技としては最適でしたが、流行のピークを過ぎてしまって久しいので、今となっては無意味ですね。

     この他にも、肩車などによる変形合体物も考えられますが、ゴール時点でそんな体力が残っている強者を集められるかどうか疑問ですし、ロボットアニメ物に対する認知度の低さは致命的ですから避けた方が良いです。


    ■歩行時のトラブル対処

     百ハイ仮装衣装は、歩行中早かれ遅かれ壊れる運命にあります。また、製作に時間がかかって、装着した状態での歩行練習が出来なかった場合、当日歩きながら調整を行う羽目になるでしょう。その事を前提にして、荷物の中にはあらかじめ修理&加工道具を入れておく必要があります。逆に、修理・加工道具が手荷物に入れておく事が出来ない類の材料で仮装衣装を作らない方が良い、ということも言えるでしょう。
     ハサミもしくはカッターは必須です。布部分は裁縫道具でどうにかなります。木材や鉄、プラスチック部分は、瞬間接着剤が一本あれば事足ります。発泡スチロールの割れ目は、クリアテープで貼り付けるしかないでしょう。ネジで固定している部分が多い場合、ミニドライバーも必要でしょう。この他にも、短い針金や安全ピン、予備のネジ等を持っていればいざという時に役に立ちます。
     コンビニの片隅にある文具コーナーで何が手に入るか調べておいて、そこにあるものでどうやれば修理できるか?なんて事を考えておくのも良いでしょう。



    ■靴だけは!

     体のほかの部分は何しても良いです。百歩譲って脚部の仮装も良いでしょう。でも、絶対にしない方が良いのが、仮装衣装に合わせようと歩行に適していない靴を履く事です。もしするなら、靴の部分だけの仮装にとどめておいた方が良いでしょう…つまりは「下駄」とか「草履」とか「裸足」などの無茶をするならば、他の体の部分は普通の服を着ておいたほうが無難であるってことです。衣装の重さで普段より荷重がかかるので、靴にだけはこだわった方が良いです。「歩行中の服装の中で一番高価なものが靴である」てな状態が理想的かしらね。

     これはあくまで私の体格や個人的な歩行フォームの癖にも関わってくる話なので、あくまで参考にするだけにとどめて欲しいのですが…
     私がここ数年愛用してきたのが、REEBOKの「DMX」という衝撃緩衝機構がついたシューズです。この「DMX」は、クッションに使われているエアーが体重移動にあわせて前後に移動し、「関節への負担を軽くする」「地面を蹴る時の負荷を踵を上げて前に押し出す力に換えてくれる」などの効果があります。これを履き始めてから、足の痛みが軽減され、歩くペースも上がったように思います。
     ただ、こいつにも弱点がありまして…コイツを履いていると、足の裏の形状が常にウニャウニャ動いているので、足のむくみやマメの発生率が高くなるように思います。ですから、これを履くのに適した条件は
     ・マメよりも関節の痛みでつらい思いをする人
     ・マメの痛みはある程度我慢できる人
    てな感じになるかと。関節・筋系の痛みは致命的な故障の原因になりますし、百ハイが終わった後も痛みが消えないので厄介です。マメの痛みは我慢して無理やり歩いているとすぐに慣れます。(これを知らずに変な歩き方をして関節とか筋を痛める人が多い模様) そう考えると、多少マメが出来やすくても、関節への負担を十分に軽減できるのですから、このDMXを選択するメリットは十分あるかと思います。
     最近のDMXは用途に合わせて特化したものになっているようですが、どれも効果はほとんど変わらないみたいです。強いて言えば、足の幅が狭い人は普通のランニングシューズのDMXを、足の幅が広い人はウォーキングシューズのDMXを選択するのが良い、って事ぐらいですか。雨の多い百ハイでは、防水性のあるウォーキングシューズの「RAINWALKER2」などが良いでしょう…登山靴と比べると防水性は劣りますが、百ハイにはこれで十分でしょう。価格は1〜1.5万円ぐらい…これで百ハイ2回はもつかと…と言うより2回目の最中に足の裏が磨り減ってクッション部分が露出してきて、2回目で使い納めになる可能性が大きいです。

     これはあくまで、私の身体にあわせた経験則なので、「オレにはNIKEがピッタリなんだ!」と言う方はそれはそれで良いと思います。とにかく、自分に最適の靴を探し出す事も百ハイの勝利の鍵の1つだってことです。



    ■その他いろいろ

     その他の個人的な百ハイ仮装感を…

     何処でどう間違ったか、長年仮装大賞を取り続けていますが、私も三十路を迎えましたし、正直なところ、そろそろ若い人たちにバトンタッチしたいなぁなんて思っています。しかし、わざと手を抜いて負けてあげるワケにも行きませんので、毎回「今年こそすごいやつが現れるのではないか」などと勝手な敵を想定して製作に励んでいますが…なかなか現れませんね。
     やはり、百ハイが仮装行列として盛り上がる要因は、仮装強制などの意識的な部分ではなく、ただ単に「多少の図画工作の技術とそれなりに体力のある人が参加しているかどうか?」なのだと思っています。でも、それほど技術もない私がこうも続けて仮装大賞をもらっているって事は、今の早稲田にはそういう人は居なくなったのでしょうか?1人では無理でも、グループで協力して作ればいい物が出来上がると思いますが…早いところ、私を完膚なきまでに倒してくれる若人が出現してくれる事をを心待ちにしています。
     かといって、無茶な仮装をして完歩できず自滅してもらっても困るしなぁ、なんて心配もしたり…私は、道中「仮装しているのに早い」とよく言われますが…恐らく私は早いほうに属する人間だと思われます。ASIMOで歩く前に、練習がてら実験的に通常の服装+バックパックのみで48.5km歩いたところ、8時間40分で歩けました。そのうち、1時間10分が休憩時間でしたから、平均時速は6.5km/hです…これは恐らく先頭集団に近いペースだと思われます。10kg以上の仮装衣装を装着したまま閉会式に間に合うためには、多分そのくらいの体力が必要なのでしょう。

     それから最後に、声を大にして言いたいのは…「作った衣装は、歩いている最中も歩いた後も捨てないように!」…どんなにゴミ屑みたいになろうとも、それは己が己に授ける百ハイの勲章です。とりあえず、とっとけ!


     皆さんの百ハイ仮装が幸多き物であります、お祈りいたします。