楽借家

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楽借家改修計画



 東京のアパートがどうしようもなく狭くなってきたので、東京近郊で安い借家でもないかと探していたのですが、なかなか見付からず途方にくれていました。そんな時、学生時代からの友人であり、げんれい工房のイベント時の助っ人の1人でもある楽志家弁当の実家(茨城の下館)が営んでいる借家(楽志家の借家なので「楽借家」と呼ぶ事にする)が1つ空いている、という話を聞き、2003年秋にそこに引っ越すことにしました。
 その借家は、物件としては4K・約50m2・家賃3.5万・庭付き〜というかなりの掘り出し物でした…が…ここで致命的な問題が! 実はそこは築6〜70年と噂される恐ろしく古い借家だったのです。
 その特徴を挙げると〜
  • 屋根はトタン葺きで、雨漏りが…
  • 便所はもちろん汲取式ボットン便所
  • 屋内の電気配線は碍子付きの2本線
  • 何故か前の住人が浴槽&釜を持って行ってしまったので風呂場は空っぽ
  • 壁の一部が板一枚だったり土壁が崩れていて、朝には窓じゃない隙間から光が差し込む
てな感じ。私が入居する直前に若干改修工事は行なわれたのですが、上記の問題とは関係無い部分ばかり修繕されていて閉口。このままでは住むには少々つらいので、許可を得て勝手に改修工事をして行くことにしました…今までの制作物ははせいぜい道具で止まっていましたが、これでとうとう「家」にまで手を出す事になったわけです…ま、限界はありますがね。
 一応、凡その改修は上から被せる形にしているので、現状回復しろと言われればできる形にはなってます…ま、戻す必要は無いと思いますが。

 簡易水洗化
 TOILET

 まず手に付けなければならないのはトイレ。下水道は近所までは来ているのですが、そこまでパイプを引くお金はない…だったらせめてポットン便所から簡易水洗に変えようと計画。引越してしばらくは近所の公衆便所に通いつつ、改修工事。

簡易水洗化  小便器と大便器の2部屋に分かれていた便所の便器を外し床をひっぺ返してみたら…小便器から便槽へ行くパイプが完全に外れていて、床下に小便を垂れ流している状態でした。床下の土の臭いが酷かったので、ペット用のアンモニア分解消臭剤を景気よく撒いたあと大掃除。すると土の下から今の部屋の形とは違う形状の基礎が出てきて「???」…楽志家に聞いてみると、かつては屋外に便所が有りその時の基礎が残ったまんまになっているみたい。なんか遺跡の発掘している気分。
 写真の左側のセメントの塊みたいなのが便槽(推定250L)ですが、長年の重みのせいか傾いていて、「まだ大丈夫だ」と思っていたら片側から溢れた事が2度ほどあります。
簡易水洗化
 今まで床を支えていた根太が余りにも細すぎたので、内側に新たに木枠を作りその上に合板を乗せて行く方式を取りました。木枠には2×4材を使ったので、和風なんだか洋風なんだかわからない状態に。
 前の住人が床下に雨水が入ってこない様に土を盛っていたのは良いのですが、何故か土台の木材ごと埋めてくれてたし…腐るぞ。その辺りの土を取り除いたあと、念のために床下には床下用シリカゲルをドバーッと撒いておきました。
簡易水洗化
 今までは「お手洗い」のはずなのに便所まで水道が通じていなかったので、庭を経由して8メートルばかり水道管を延長。また排水溝も延長して、手洗い後の水を流せるように…あくまで手を洗った後の水を流すだけで排泄物は便器下の便槽に溜まります。
庭を経由させたついでに水道管を途中で分岐させて庭に洗濯機を置けるようしたり。
簡易水洗化
 アサヒ衛陶の節水型簡易水洗便器ニューレットAF50を購入し設置。土壁の上にを細い木枠を組んでベニヤで覆っていきます。床にはクッションフロアを貼り付け。
 水道管を仮接続して試運転…つーか尿意&便意を我慢できなくなっただけですがね。とりあえず問題なさそうなので一度水道管を外し、仕上げ作業に。
簡易水洗化
 壁紙を張り、水道管を繋いで完成。この時点で、便所でありながら他の部屋よりもよっぽど綺麗な部屋になりました…映画「どら平太」の「厠みたいな汚い場所は必要だが、その厠こそ家で一番きれいにしておかなければならない場所だ」って台詞を思い出します。実際、この簡易水洗セットには洗浄用のウォーターガンが付いているので、こびり付いてもすぐに掃除できるのが良いですね。

 昔の建物だけに壁が正確な長方形をしておらず、何かと修正せねばならない部分が多くて、完成までにで2週間ほどかかりました。「節水型」を謳うだけの事はあって使う水の量はかなり少なく済んでいる模様で、簡易水洗用の便槽ではないのに、1人住まいで二ヶ月前後もちます。

 風呂
 BATH
風呂  理由は良く解からないのですが、前の住人が引越の際に浴槽と風呂釜を持って行ったので、引っ越した直後は風呂場は何も無いスッカラカン…で、しばらくは前から使っていた「隠し湯」を置いて使ってその場をしのいでいましたが、流石にどうにかせねばと思い、とりあえず浴槽を買おうと探し回りました。
 近所のリサイクルショップで1人用の浴槽を5000円で売っているのを発見。それを買おうとかなーと思いつつ、その帰りがけに近所のホームセンターに寄ったら、駐車場の脇のホームセンター用のゴミ捨て場に何故か浴槽が捨ててあるのを発見。店員に聞いてみたら「持って行っても良いけれど、『やっぱり要らない』って返しに来られては困る」との事だったので、ヒビや汚れをチェックしたところ、何故か殆ど新品状態! 恐らくは店内で「リフォーム例」として展示されていた物だったのでしょう。この数ヵ月後にこのホームセンターは大改装していましたから、それに向けて邪魔になった物を捨ててたのかもしれません。
 何はともあれ、これはめっけモンだと思い、急いで自転車に積んで…自転車に積ん…積…積めるかよっ! 仕方なく浴槽をすっぽり被ったまま、自転車にまたがり2kmの家路をノロノロ・フラフラと…途中、下校中の女子中学生らしきの集団(っても足元しか見えませんでしたが)に出くわし大笑いされましたが…貴様ら、家に風呂の無い辛さを知らんだろう!
 浴槽は手に入りましたが、肝心の湯を沸かす風呂釜は良いのが見付からず…というか「隠し湯」に慣れていてシャワーだけでも気にならないので相も変わらず台所の瞬間湯沸かし器を使用中…流しからの距離が遠いので2.5mぐらいの棒で蛇口を操作しています。ここもいずれちゃんと改修したいですね。

 最初の設置からしばらくして、「やっぱり浴室の外で体を洗うことは無い」と判断したので、コンクリむき出しの部分に枠を作って板で塞いでしまいました…ココを塞いでいなかったので、夏にはナメクジが出るわ、冬は外気とほぼ同じ温度になるわ、マイナス面が多かったモンで。結果的に台所が広くなりました。
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 三畳間→四畳半化
 3JYOU →4.5JYOU
三畳間改修  この楽借家で一番おかしな構造をしているのが、北側の三畳間。部屋に入ろうと戸をあけると、すぐに縁側の様なところがあり、その先に部屋があります。柱をみると何やら無理やり継ぎ足した形跡があり、屋根部分のトタンも他の部分よりも少し新し目…つまり、この三畳間は後から増築された部屋なのです。ただ全体的にかなり歪んでいる上にあちらこちらに隙間があり、スカスカで冬にはほぼ外気温と同じ…とても人が住める部屋では無かったので、引っ越してしばらくは倉庫として使っていました。
 しかし、2005年春にげんれい工房の相方・左端の天使がしばらくの間ウチに居候することになり、この部屋を人が住める様に改修することにしました。

三畳間改修  この改修と時期を同じくして、楽志家の職場の移転&プレハブ解体が行なわれたのでその手伝いついでに、プレハブから使えそうな物を貰ってきました。一番の収穫はアルミサッシが2つ手に入ったこと…普通に買うと結構高いのよね。
 とりあえずは、今まで隙間風だらけだった窓にそのアルミサッシを装着。すこしサイズが違ったので、窓枠を狭めたりサッシとガラスを切断したり…この辺りは初めての体験だったので結構新鮮。
三畳間改修  今までは、屋根の裏=天井だったので、新たに天井用の木枠を作り、断熱材を挟みつつベニヤで天井張り。
 何だか解かりませんが、屋根を固定するのに使っている釘が貫通して露出しているので、かなり危なっかしい状態でした…前の住人は怪我しなかったのかしら?
三畳間改修  ここが今回の改修の要!ふと部屋の隣にある元・縁側と半間の押入を見ながら、「この押入れの壁が無ければ、部屋が三畳から四畳半に広がるな」と思ったので、調べてみたら…案の定、柱に板を打ち付けただけの「なんちゃって押入」だったので、簡単に解体できました。でも得体の知れない増築部分なので柱だけは残しておいた方が良いと判断…ってもこの柱は一本物ではなく、途中で分割されており、しかも乗っかってるだけの部分があるのでごつい金具で固定しました。
三畳間改修  土壁を板で覆っただけの壁の上に新たな木枠を作り、断熱材を挟みつつ石膏ボードで覆いました。石膏ボードはやすくて加工しやすいのは良いのですが、石膏の粉で部屋が真っ白に…後で掃除が大変でした。
三畳間改修  床にフロア材を敷きました。これでかなり部屋らしくなりました。このフロア材も例のプレハブ解体時にひっぺ返してもらってきた物だったりします。もともとの床がヘナヘナだったので根太を追加しましたが、諸事情で間隔が普通よりも広くなったので、やはり少し軟い感触の床になりましたが、それでも前よりはマシになったので良しとしましょう。
三畳間改修  天井と壁に白い壁紙を貼って完成。便所の改修の時は部屋が狭くてヒーコラ言いましたが、部屋が広かった分楽になったような大変だったような…どっちだ?
 生のりタイプの壁紙を使ったので貼り直しができたのは良かったのですが、仮止め部分や手や作業道具が生のりでベトベトになるのが問題ですね。

 規模的には便所の4.5倍ほど広かったにもかかわらず、10日間ほどで作業を終えました。作業への慣れやツールの充実もさることながら、途中から人手が二人に増えたからってぇのもありますかねぇ。天井への壁紙貼りなんかは、1人では相当苦労したでしょうから。あと、車を持つ様になって一度に大量に資材を運べる様になった事も大きいですかね。
 以前は古くて暗くて寒くてあまり好んで入ろうとは思えない部屋でしたが、白い壁紙のせいか部屋がぐっと明るくなり、以前とは全く違った印象になりました。今では、楽借家で一番見栄えのする部屋になってます。

 その後、左端の天使が実家に帰ったので、今では工房の材料&在庫置き場になってます。

 勝手にロフト
 HANDMADE LOFT
ロフト  東京のアパートにいた時にも「ただいま夜逃げ中」のリヤカーに使ったアングルを鴨居に渡してロフトもどき…通称「勝手にロフト」を作っていましたが、楽借家でも再構築。広さは約2畳…ちなみに東京にいた時は2.8畳ありました。こういう物が引っ掛けられる鴨居があるのも古い物件の利点ですかねぇ。最近の真新しいアパートだと石膏ボードに壁紙を張ったツルンとした壁が多いですから。
 しかし、東京のアパートでは6畳間の上に作っていたのですが、今度の楽借家では8畳間の上に作らばならないので横幅が広すぎて流石にアングルでは強度不足。アングル2本を中央で無理やりつなげてしばらく使っていたのですが次第に中央部分が垂れ下がってきたので、2×6材で作り直しました。お陰で真ん中に私がぶら下がっても大丈夫なほどの強度になりましたから、そーっと乗れば人が寝られそうです。でも、もともとの柱に負担をかけぬように、あまり重いものを乗せるのは避け、軽いけどかさ張る物だけを置いてます。


 物置
 Lumber room
物置  庭に0.5坪の物置・サンキンSKL-50を設置。1人で作れるのか疑問でしたが、以外と簡単に作れるものなんですねぇ。地面にでかいコンクリート塊を埋めてアンカーボルトで固定してますが、物置本体を作るのよりも、基礎の穴掘りの方がよっぽど疲れました。他には特に工夫はしてません。

 比較図
 Before → After
比較図  今の所の改修前後の比較図です。左の黄色い部分が手を加えたところですが、他にも細かいところをチョコチョコなおしてます。      


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